不思議なび

世界の果てまでエア冒険。都市伝説から世界の絶景まで、不思議大好き不思議ちゃん管理人による謎解き冒険ブログ

【電車にまつわる怖い話】幽霊列車の伝説 線路を永遠にさまよい続ける魔列車

近代の地球を代表する発明の1つである列車。
極めて正確な時間に目的地へと人を輸送することが出来るため、我々にとっては無くてはならないインフラの1つであり、自家用車なんかよりもずっと実用性が高い。

しかし、線路の上を走るのは通常の列車だけとは限らない。中には時刻表に記載されていない謎の列車が存在し、わたし達を巧みに誘い込もうとする。

今回の話は、列車にまつわる都市伝説の1つである「幽霊列車」について語られたものである。

幽霊列車の伝説 線路を永遠にさまよい続ける魔列車

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やれやれ、参ったな。と僕は思った。

すぐにやむだろうと思っていた雨はどんどん強くなり、今ではスコールみたいな土砂降りになっていた。
アスファルトのホームに雨粒が叩きつけられ、僕の目の前は飛び散った雨粒のかけらで白く煙っていた。
次の東京方面の電車が来るまでは後40分ほどある。
傘も無いのでこのままこのちょっとしたホームの待合室にいるしかなかった。

僕はリュックサックの中から読みかけの小説を取り出して読み始めた。
しかしすぐに諦める事となった。雨音がうるさいのだ。
まさにバケツをひっくり返したように降る雨は太鼓の乱れうちのような音を立てて地面へと降り注いでいる。
ここまで凄いと趣も何もあったもんじゃない。
全く集中できないので僕はぼーっと雨が降るのをただ眺めていた。

そんなことを5分ほど続けていると、つと目の前に黒い傘を差した男が現れた。

そして傘を畳み、にっこりと笑って「隣いいですか?」と僕に話しかけた。その笑顔がとても素敵だったので、僕も思わず笑い(しかし彼に比べて多少ぎくしゃくとした感じで)もちろんどうぞと言った。

彼は傘の水を丁寧に払い隣に座った。そして僕の格好を見て、旅行でここに来たのかと聞いた。
僕がそうですと答えると、「ここは良い所ですね」と彼は言った。

「ここはいいところですね。山は美しいし、のどかだ。出来るならこんなところで暮らしたいですよ」

彼はここの住人ではないようだった。

「僕もちょっとした仕事でこちらに来ていてね、今から会社へと帰るんですよ。全く毎日あくせく働く生活なんて本当はもううんざりなんですがね」

僕もちょうど話し相手が欲しいところだったので、彼としばらく軽い世間話をした。
彼は僕と余り年が変わらないようで、就職してまだ2年目だということだった。
仕事は忙しいらしく、趣味の旅行はたとえ1泊2日のものでも
年に1回行けるかどうかになってしまったと嘆いていた。

そんな話をしていると、彼がふとまじめな顔になって切り出した。

「幽霊列車ってご存知ですか」
幽霊列車?それは幽霊船のようなものですかと僕は聞いた。

「幽霊船とは全く違います。幽霊列車は別に朽ち果てているわけではありません。今でも日本のどこかをひっそりと走っていると聞きます。もちろんそんなもんは時刻表には載っていません。
でもその列車は時々現れては、駅に止まるんです。乗る人がいつも数人しかいないような小さな駅に。
そしてそこで電車を待っている人を乗せて走り去ってしまうんです」

「しかし、いくら電車を待っていたからといっても見たことも無い電車にそうそう乗ってしまうもんですかね」と僕は聞いた。

「もちろんそうです。でも幽霊列車は見る人それぞれによって姿を変えるんです。黄色い電車を待っていた人には黄色い電車。青い電車をまっている人には青い電車にってね。だから疑わずに乗ってしまうんです」

それで乗ってしまった人はどうなるのかと僕は聞いた。
手の中にあったジンジャーエールの缶は心なしかいつもよりも冷たく感じた。

彼は続けた。「幽霊列車はいつも無人です。乗客は一人もいないし、運転手も車掌もいません。
みんな幽霊列車に食われてしまったんです。
幽霊列車はただ、走り続ける為に存在する列車です。そのためにそれは人の魂を必要とします。
幽霊列車は人の魂を燃料にして走り、魂が尽きると小さな駅、乗客が誰もいなくても不審に思われないような駅に行き、一人だけ捕まえてまた走り続けます。それを永遠に繰り返しているのです」

そして彼はにっこりと笑った。
「だって、もし誰も乗っていない列車が朝の品川駅に到着したらおかしいでしょ?幽霊列車もちゃんと考えているんですよ」

僕は愛想笑いを浮かべると、ジンジャーエールを一口飲んだ。彼の笑顔は相変わらず素敵なものだったが、今回のは以前のような暖かみを感じるものではなかった。

それからも僕らは話をしたが、余りにも奇妙な話をしたからであろうか、会話は余り弾むことも無く時間だけが過ぎていった。

雨の勢いが少し弱まったころ、遠くのほうからガタンゴトンと音がし、やがて列車がホームへと滑り込んできた。
雨音によって消されてしまったからなのか、その列車はやけに静かに駅に到着した。

僕はそれが東京方面へと向かう列車であることを確認すると、リュックサックを担ぎ彼に挨拶した。

僕は雨をリュックでしのぎながらドアへと向かった。
しかしその時ちらっと左手の腕時計が見え、僕はある事に気がついた。

この列車は、時刻表に載っていた時間よりも5分早く到着している。

それはただ運転手が急いだだけかもしれなかった。この駅で時間調節を行うかもしれなかった。
僕はそう思う事にして、列車の中へと入った。なにしろこの列車を逃したら次に来るのは2時間後だ。

ロングシートの座席に座りリュックを置いて、僕は辺りを見回した。

車内には、誰もいなかった。

鳥肌が立った。一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなった。
手の中のジンジャーエールの缶が氷のように冷たくなった。

僕が振り返ると、待合席で電車を待っているはずの青年は、どこにもいなかった。

その瞬間、ドアが閉まり、ガタンという音と共に列車は動き始めた。
列車は来たときと同様に滑るように発進し、たちまち速度を上げた。

 
どのぐらいの時間がたったのだろう。列車は、駅に到着していた。

僕は転げ落ちるようにホームへと飛び出た。
そして掃除をしていた駅員をつかまえるとここはどこかと聞いた。
駅員は迷惑そうな顔をしながらも駅の名前を教えてくれた。
間違えない。あの駅の次の駅だ。

「お客さん、大丈夫かい?顔が真っ青だよ?」と駅員は言った。

僕は幽霊列車の話をし、あの列車がなぜ5分早く到着したのか、どうして誰も乗っていなかったのかを聞いた。

駅員は笑いながら答えた。

「列車はちゃんとダイヤ通りに動いてますよ。今日は祝日だから土日のダイヤで動いているんです。お客さんの見たダイヤは平日用だったんじゃないんですか?それに誰も乗っていなかったのは、あの駅始発の電車だったからです。大丈夫。電車が人を食うなんていうこと、あるわけ無いでしょ」

僕は暖かいものでも飲んで行けと駅員に言われ、お茶を一杯御馳走になってからそのまま家へと帰った。
何も変わったことは起こらなかった。

今、こうして毎日平穏に暮らしていて、ふと彼の事を思い出すことがある。
おそらく僕は運が良かっただけなのだろう。僕はたまたま幽霊列車に乗らずに済んだ。
でもほんのちょっと何かがずれていたら、今頃僕は列車に食われていた。
幽霊列車は確かに存在しているし、今もひっそりとどこかの線路を走っている。
僕は運が良かっただけなのだ。

僕は未だに小さな駅で、一人で列車に乗ることはしない。

幽霊列車 解説

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偽汽車に代表される列車にまつわる怖い話は沢山あるが、この話は列車そのものが幽霊であり、日本中に敷かれたレールの上をさまよい続け、時に人の魂を食らうという、まさにファイナルファンタジー6に登場した魔列車のよう。
幽霊列車には意思があり巧みに人を誘い、乗ってしまった人は消えてしまうと語られている。
本編に登場する、幽霊列車について語った青年は幽霊列車の使いだったのか、彼がこの話をした後に幽霊列車が到着し、運悪く乗ってしまうが、すぐに気がつき難を逃れている。

もし、この話が真実であるならば、今もなお幽霊列車は日本のどこかを走っているのだろうか…?